2017-08

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日影 眩 新作展 2014 “ニューヨークの肖像”

2014年6月16日(月)〜6月28日(土) @ステップスギャラリー について。

ステップス画廊は銀座4丁目、Gucciの後ろにあるビルで日本一地の利がいい。かくて普段東京に居ない私であっても来場者は引きも切らなかった。但し到着してから階段を5階まで上がらなければならない。お歳を召した方には試練だが、ほとんどの方が問題なく上がってきて下さった。案内状のテキストは画廊オーナーで、私についてほとんど80年代から知って下さっていた自身アーチストでもある吉岡まさみ氏と、川崎市岡本太郎美術館名誉館長の村田慶之輔氏にお願いした。イメージは目から上をキャンバスからはみ出させて裁ち落としたシリーズと、色によって侵蝕される人像の新シリーズからなる。

日影展-steps1
日影展-steps2

会期前の6月10日には読売新聞シティライフ、11日には朝日新聞美術欄にイメージと情報が掲載された。またオープニング当日に産経新聞の取材があり、同じ週の19日(木)には大きく記事が掲載されて、個展は快調な滑り出しを持った。以下に新聞のイメージを引用する。
産経日影展72 

読売新聞夕刊 2014年6月10日 シティライフ    朝日新聞夕刊 2014年6月11日 美術欄
読売夕刊朝日夕刊

また始まる前にイメージを見て作品「スケルトン」(¥320、000)が予約され、その点でも好調な滑り出しを見た。最終作品は7点が売れ、作家、画廊ともに一応は満足すべき結果となったと思っている。

特筆すべき事は非常に大勢の方に、ワイン、焼酎、日本酒、菓子、寿司、その他お祝いの品を頂いたことで、一寸途方に暮れるくらいだが、深く感謝している。それからそのことにもまして、作品に付いて、暖かい賛辞を頂いた。もちろんこれまでの作品を支持して下さっていた方々からの失望の声も聞こえてきたが、その見方は私自身のものでもあるので、私は落胆をしなかった。一方イメージが変わったと見られた新作は、進化と捉えられ、これまでに経験しない大勢の女性、比較的若い男性からこれまで経験したことの無い圧倒的な評価を頂いた。実は私も何度も何度も確認して、自負するところも大きかったのだが、その自負が裏切られることが無かった。この事が今回もっとも嬉しかったことである。

これから後、この見極めを付けた作品を制作して過ごすことにする。今またプリントして見ているが間違いない。
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意味する美術 日影眩作品

この文は,2011年に,故美術評論家中村伝三郎氏の子息でありコレクターでもある中村徹氏が,私の作品について書いてくださったエッセイである.
アメリカで絵画が死んだと言われて久しいが,今日その死んだ絵画は遂に灰になって跡形も無く吹き飛ばされてしまったかのように思える。私が当時考えていたことは,ある時代の都市や人を,その精神や気風,空気まで含めて捕らえることは,写真では不可能だろうという推察だった。そこにはどうしても視覚だけではなく,聴覚や嗅覚、触覚など五感を持つ人間の感受性と、表現する才能が必要とされるだろうと。あるエスパー(天才)によって、時代とその精神は一枚の絵にシンボライズされ得るだろうという希望を抱いていた。私にそれが可能であるかどうか? それこそ画家になった者の唯一の道であり挑戦でもある。事実を伝えることに心を奪われれば,それは写真を越えられない筈だ。単にリアルであることは命取りだろう。例えば私たちは時代と精神を見事に伝えたアクロポリスの神殿を思い起こせばいい。あるいは江戸の浮世絵を。北斎の「神奈川沖浪裏」は、現実の富士山が,今日世界文化遺産と認定される根拠となった。中村氏はこの問題について慎重に考察されている。日影眩
   
意味する美術 日影眩作品

2007年、<晴れた日には明日が見える>と題した日影眩の新作展を東京・東邦画廊で観た。2001年9月11日以来のテロにおびえるニューヨークの表情を描いた「神はアメリカを祝福する」作品など、極度のローアングルで描かれた、アメリカのいまを伝える作品であった。
2009年9月、<ザ・ニューヨーク・ストリート>と題する新作展を同じ東邦画廊で観る。「ガイアの夏」など、2007年展同様、ニューヨークの現在を伝える作品が並ぶ。その中に、「万年筆」(油彩 2008年制作、81.2×61.0cm)と題する作品に眼が入る。妙にこの「万年筆」が私の意識に働きかけてくる。
ローアングルで描く、スクールガールとサラリーマン。万年筆と時計。中央のスクールガールの一見エロっぽい太ももを斜めに大描きしながら、スクールガールの左手に万年筆、そして二人のサラリーマンを画面に配し、右上には、時計が描かれている。建物内と思われる。場所はニューヨークではなく、東京である。東京はニューヨーク同様、猥雑でありながら、しかし人を惹きつけて止まない魔力を持つ大都市であり、欲望渦巻く大都市でもある。
絵画は普通、眼の高さを基準にして描かれ、必要に応じて高めにあるいは低めに描かれるが、日影作品は、地面に近いアングルから描写される。正当な美術教育を受け、美術雑誌にアメリカの紹介記事を毎号寄稿してきた日影である。
作者はどうしてこんな描き方をしたのだろうか?
何を表わそうとしているのだろうか?
「万年筆」の画面は、アメリカに暮らす日影の眼に写った、2008年の現代日本の大都市・東京の断面であり、2008年東京は、スクールガールとサラリーマンにシンボライズされているのだ。スクールガールは未来と欲望を表わし、サラリーマンは効率を、万年筆は知識であり、場合によっては知性を表現しているのか?時計を配することで、時計は「メメント・モリ」(ラテン語で「自分が必ず死ぬことを忘れるな」という意味の警句)の哲学のなか、現世での時間がどんどん少なくなっていくことを示すものと考えられており、「死」をも予感させている。

万年筆 日影眩 万年筆 キャンバスに油彩 81x61㎝ 2008

じっとこの絵を観ていると、私の頭の片隅に、遠い昔読んだ作者、レヴィ・ストロースの名が浮かびあがる。日影作品は、レヴィ・ストロースのいう、記号の体系としての「意味する美術」「意味を伝える美術」「意味することを目指した美術」ではないのか。知覚より概念を重視し、意味を伝えようとしているのではないのか?
人類学者にとって未開社会で作られる美術品~例えばブリティシュコロンビア先住民の仮面や衣装であれ、ブラジル熱帯雨林に住む民族の神話であれ~は、貴重な記録文書としての価値を持つ、という。それは、その社会の持つ信念や、社会組織について、重要な情報を与えてくれるからだ。日影作品は現代社会を映す意味する美術ではないのか?ただし、レヴィ・ストロースは、「意味を伝える美術」は集団の受け継ぐ遺産~文化~のなかから自然発生するもので、個人が効果をねらってこの様式を模倣しても、外部からそれを押しつけるのは不可能である、ともいう。
日影は、日影の特徴であるローアングルで、アメリカや、いまの日本社会・東京を表現する。作品は一見、実のようでいて虚であり、虚のようでいて実があるが・・・。

意味から自由といわれるマーク・ロスコのシーグラム壁画に魅かれる私だが、その対極にある、意味を伝える日影の作品は、同時代・今を伝える作品である。
現在、日影眩は、ブロードウエイを行く若いカップルを描いた作品「愛」で、時に消去されていく存在を描き始めている。時間の流れを、消え行く身体にゆだね。消滅を表わす、いわば新・メメント・モリだ。
日影作品が、本当に社会から生まれる「意味する美術」となるか今後作品を観続けるが、願いも込めて、新たな時代の先端を目指す「意味する美術」となっていくだろう。
1936年生まれの日影の筆先はますます元気。「意味する美術」は意気軒昂である。
今年開かれるという、池田20世紀美術館における日影眩の個展を期待する。
       (中村 徹 2011年1月10日記 2013年12月15日再校)

テーマ:絵画・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

日影 眩マガジン・カバー・シリーズ「ニューズウィーク2003.2.3号-戦争に夢中」-ニューヨークのノー・ウオー展-

 この作品は今では廃刊になってしまったニューズウィーク誌の表紙を絵にしたものだ。当時は写真や活字を絵にすることで活性化すると言う考えで雑誌の表紙を絵にしていた。
 ニューヨークからメトロノース鉄道で1時間半掛かる、ピークスキルの街全体を会場にした地元アーチストも参加する二日間のアート展で、この絵を発表した(2003年9月)。  
 初日土曜日かみさんも一緒に搬入して映画館の廊下での飾り付けに立ち会い、映写されている映像作品を見て、さまざまな店のショウウインドウや民家を会場にした他のアーチストたちの作品を見て回って、街を見物した。
 翌日の日曜日は、ニューヨークから仲間を引き連れた友だちや、アーチストたちも来て、アートショウを見て回り、レストランで食事もして交流したのだが、なぜか会場の映画館は鍵が掛けられて開かず。もう開催時間も終わって、搬出する時になったらようやく映画館には入れて、友だちも辛うじて見ることができた。

Newsweek Hell bent 735pix
Gen Hikage Newsweek 2003.2.3. acrylic on canvas 2003 日影 眩「ニューズウィーク」2003年2月3日号 戦争に夢中 フセインを攻撃することが本当に私たちを安全にするのか?

 キュレーターがその会場にいわばアンチ・ウオー、アンチ・ブッシュの作品を飾り映写したのが原因と思われたけれど、キュレーターもそのことについて一切説明せず、メインの日曜日にはるばるニューヨークから来た人たちや、来ると言っていた画廊主など来たはずのアート関係者にも見せられなかった。
 館主が共和党員だったのではないかと推測をして、アメリカという国の実体を垣間見た気がした。それにしてもアメリカのメディアは表紙を使って反戦の意志を表していたんだなと思う。それが出来たところにアメリカ民主主義の健全さも感じる。戦前の日本ではあり得なかった。
 結局私はこのシリーズの作品を、ニューヨークでは発表できなかった。ただその後数年、イスラム系の画廊と思われる画廊からポリティカルな作品展の案内状が来ていた。関係があったかどうか今となっては分からない。けれど当時今は無くなったその画廊以外、イラク侵攻の時代に、それを批判するような展覧会はニューヨークでは他に開かれなかったと思う。
 このシリーズは2006年に東京のギャルリー・ヴィヴァン個展で一部を発表し、末弟がワールドトレードセンターが炎上する表紙の「ニューヨーク・マガジン誌-9.11」を買ってくれたけれど、大して注目されず、この後、写真を絵に描き変える考えは持続したが、ニューヨークの街を自身で撮った写真を元にするシリーズに転換した。

I could show this painting only on Saturday in September 2003 in Peakskill Project, Two days Group Exhibition at Paramount Theater in Peakskill New York. Next day, Sunday, the possessor of the theater locked the theater doors all day long. I did not know why, but all the art works and a film showed at the theater were describing the antiwar.

テーマ:絵画・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

日影 眩の擬人化作品「グラデュエーター」アクリル 2001年

「グラデュエーター」、前の「再生」に続く作品。未発表。ここでもスカジ・アダプターが花になり、パナソニックの電池が蜻蛉になったりしているが、発想の段階では擬態と言うことも考えていた。生物が工業製品を装う。何か人工物があると思っていたら、それが動く。この年のアカデミー賞が「グラデュエーター(剣闘士)」だった。この頃本名で売り出そうか(笑)と考えていた。それでカタカナで本名のサインが残された。今見るとそんなに悪くないか? と思う。

グラデュエーター

Gen Hikage "Graduator" acrylic on canvas 20x24inches 2001

テーマ:絵画 - ジャンル:学問・文化・芸術

日影 眩の擬人化作品「再生」アクリル 2001年

 この作品「再生」はニューヨークに来て5年目、ようやく新しい環境にも慣れて、その環境に基づいた作品を作り始めていた時代の、アレゴリーシリーズの最初の作品。未発表。

 東京に比べてブルックリンはゴミの多い環境に思えた。自分を取り囲んでいる器物を擬人化して生き返らせたいという欲求が生じていたと思う。

 このシリーズを見たある人がサイン帳に残した短い言葉 "Nice. I Alway Enjoy Inanimate Object Coming to Life."(いいね。私は何時も無生物が生き返るのを楽しみます。)にヒントを得て、展覧会の後、器物に眼や羽や手脚を加えることではなく、絵を描く事が対象を蘇らせることと考えて、写真も活字も無生物と捉え雑誌の表紙シリーズに進む。

 写真を絵に描き変えるという今の方向がそこから生まれたのだが、考えて見るとそれはそもそも大昔から絵画の機能だった。ただ実物のように描く事が歴史的役割だっただけではなく。生き物の痕跡が眼に与える生気・安らぎと言うものが大切だった。けれど西洋は機能性と効率を重視して機械を優先し絵画を葬ろうとしている。あなたは常に無生物が蘇ることを楽しみにしてきたはずだ。

 ここには今では消えたスカジケーブルが描かれている。また羽は当時落ちた旅客機の機体の残片である。

再生

Gen Hikage "Reproduction" acrylic on canvas 20x24in 2001

テーマ:絵画・美術 - ジャンル:学問・文化・芸術

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